自動車保険の中には、相手に損害賠償するための保険と、自分たちの損害を補償するための保険があります。
自動車保険は、複数の保険・特約・サービスが集まってできています。
対人賠償保険 事故の相手のため + 人の損害のため |
対物賠償保険 事故の相手のため + 車の損害のため |
人身傷害保険 こちらのため + 人の損害のため |
車両保険 こちらのため + 車の損害のため |
このうち、相手への損害賠償のための保険、対人賠償保険と対物賠償保険について説明します。
対人賠償保険は、自賠責保険と連動し、自賠責保険の足りない部分を補います。
自動車保険には、強制保険と任意保険があります。
法律で義務付けられているのが強制保険で、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)と呼ばれます。
車は便利だけど、危険でもあります。そこで、他人に損害を与えたときに、責任をとれるように、自賠責保険への加入が義務付けられています。
つまり、事故の相手方(被害者)の保護が、強制保険の目的です。
自賠責保険は、“物”の損害を補償しない
ただし、自賠責保険の補償は、かなり限られています。物足りない点が、2つあります。
- 生命・身体への損害しか補償しない(“物”の損害は対象外)。
- 保険金額に上限がある。
自賠責保険が補償するのは、生命・身体の損害だけです。ということは・・・
相手の所有物に損害を与えたとき、自賠責保険は、全く役に立ちません。
相手の車や、車に積んでいた荷物や、建物や塀などの修理代は、自賠責保険からは出ないので、他の方法で資金調達しなければなりません。
自賠責保険の保険金額は万全ではない
また、相手の生命・身体の損害に対して、自賠責保険から出る保険金額は、以下のように上限が決まっています。
損害 | 上限額 |
---|---|
死亡 | 3,000万円 |
後遺障害 | 4,000万円 |
傷害(ケガ) | 120万円 |
相手の損害額が上限額を超えると、超えた分は自腹で損害賠償しなければなりません。
損害保険料率算出機構『自動車保険の概況』(2018年度)によると、2017年の死亡保険金1件当たりの金額は約2,500万円でした。
ということは、平均的な金額に収まれば、自賠責保険だけで損害賠償できます。しかし、相手の損害が平均以下に収まる保証はありません。
一つまちがえば、相手の損害は高額になる
やはり『自動車保険の概況』から、損害賠償が高額になった事例をいくつか引用します。
損害賠償額 | 判決年月日 | 事故の概要 |
---|---|---|
5億2,853万円 | H23.11.1 | 死亡。被害者は41歳の開業医。 |
3億9,725万円 | H23.12.27 | 後遺症。被害者は21歳の大学生。 |
3億6,551万円 | H21.11.17 | 後遺症。被害者は14歳の中学生。 |
1億1,798万円 | H23.12.7 | トレーラーの損害。 |
2,221万円 | H23.11.25 | ペットショップの損害。 |
4,141万円 | H20.5.14 | 積み荷の損害。 |
下の3つは、相手の財物の損害です。自賠責保険では補償できないので、全額を自腹で損害賠償しなければなりません。
それ以外は、生命・身体の損害です。事故の相手(被害者)が、たまたま若者だったり高額所得者だったりすると、損害賠償額は跳ね上がってしまいます。
自賠責保険は、平均以下か平均的な事故の損害なら、けっこう役に立ってくれそうです。
しかし、安心できるかというと、物足りません。
自賠責保険の不安なところを補うのが、任意の自動車保険です。
具体的には、自動車保険の中の対人賠償保険と対物賠償保険が、自賠責保険の不足分を埋め合わせます。
対人賠償保険と対物賠償保険の保険金は、ほとんどの人が無制限にしています。
損害保険料率算出機構『自動車保険の概況』(2018年度)には、自動車保険加入者の、保険金の状況も収録されています。
対人賠償保険は、ほとんどが無制限
主な車種について、対人賠償保険に入っている人の《無制限》の割合を、下表にまとめました。
車種 | 無制限 の割合 |
---|---|
自家用乗用車 | 99.8% |
自家用貨物車 | 99.2% |
軽乗用車 | 99.9% |
軽貨物車 | 99.3% |
営業用乗用車 | 84.8% |
営業用貨物車 | 98.8% |
オートバイ | 99.1% |
原付 | 97.5% |
営業用乗用車はやや少ないですが、それ以外は100%に近い人が、無制限を選んでいます。
対物賠償保険も、加入者の大半は無制限
上と同じように、対物賠償保険についても、無制限にしている人の割合を、下表にまとめました。
車種 | 無制限 の割合 |
---|---|
自家用乗用車 | 97.1% |
自家用貨物車 | 91.3% |
軽乗用車 | 97.1% |
軽貨物車 | 91.2% |
営業用乗用車 | 48.9% |
営業用貨物車 | 77.6% |
オートバイ | 93.8% |
原付 | 73.2% |
全体的に、対人賠償保険より少なくなっています。それでも、自家用車・軽自動車は、90%以上が無制限です。
それに対して、営業用車と原付は、目に見えて減っています。
対物賠償保険の支払い実績は少額
『自動車保険の概況』で、2017年度に対物賠償保険から支払われた保険金額を調べると、金額は意外と少ないです。
車種 | 1件あたり 保険金額 |
---|---|
自家用乗用車 | ¥297,550 |
自家用貨物車 | ¥356,612 |
軽乗用車 | ¥287,586 |
軽貨物車 | ¥296,575 |
営業用乗用車 | ¥255,224 |
営業用貨物車 | ¥492,264 |
オートバイ | ¥248,064 |
原付 | ¥158,761 |
貨物車は、他より金額が大きくなっています。積み荷の落下など、乗用車より物損事故のリスクは高いようです。
また、貨物車と原付きを除くと、保険金額の差は、そんなに大きくありません。
対物賠償保険は、相手への損害賠償の保険です。こちらがどんな車でも、相手の損害の大きさに、あまり影響しないようです。
ところで、実際に対物賠償保険から出る保険金額は、予想外に少額です。これなら、保険金額を《無制限》にする必要はなさそうです。
しかし、上で見ていただいたように、大半の人は《無制限》にしています。
一般家庭は、対物賠償保険も無制限で
営業用車を所有しているのは企業です。おそらく、一般的な世帯より資金力があります。
万が一、損害賠償額が高額になって、対物賠償保険の保険金額を超えても、ちょっと無理すれば不足分を調達できるのかもしれません。
しかし、一般の世帯で、同じことをできるとは限りません。
数千万円とか億単位の損害賠償責任を負うことで、破産や一家離散などの危険があるなら、保険でしっかりと対策しましょう。
対物賠償保険も無制限をおすすめします。
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損害保険会社は自動車保険の金額までしか示談交渉してくれません。保険金額を低くすると、後々面倒になるかも・・・
自動車保険には、示談交渉のサービスが組み込まれています。
自動車事故になったら、損保会社の担当者が事故の相手方(あるいは相手方の損保会社)と交渉して、解決に導いてくれます。ありがたいサービスです。
ただし、損保会社は、自社で引き受けている保険金額の範囲でしか、示談交渉してくれません。
たとえば、対物賠償保険の保険金を3000万円にしていたら、3000万円の範囲でしか示談交渉をしてくれません。
もし、こちらの損害額が3000万円を超えていたら、超える分の示談交渉はわれわれ自身がやるか、弁護士などに依頼することになります。とても面倒です。

これは法律で決められていることなので、手数料を支払ったとしても、示談交渉してくれません。
保険金額を無制限にしておけば、すべて損保会社に任せることができます。
保険料を節約するなら、まず自分のための補償をチェックしましょう。
上に書いた通り、相手の損害を賠償するための保険は、保険金額を無制限にしておきたいです。
ということは、保険料を節約するなら、自分のための補償、つまり「車両保険」「人身傷害保険」「搭乗者傷害保険」などを見直すことになります。

「車両保険」「人身傷害保険」「搭乗者傷害保険」などは、入るにあたって設定しなければならない項目がいくつかあります。それらの設定によって、保険料の負担をおさえることが可能です。
自動車保険料を安くする、おすすめプランなどの記事で、その方法を具体的に説明しています。参考にしてください。