個人賠償責任特約とは、自動車事故以外の日常の事故で、相手に損害賠償する補償です。
個人賠償責任特約は、自動車事故とは直接関わりのない補償です。
そういう意味で、この特約は抱き合わせの販売です。その要否は、慎重に検討していただきたいです。
とは言え、補償内容がいい加減なわけではありません。自転車事故とか、集合住宅でのトラブルとか、いろいろな場面で支えになってくれます。
このページでは、そんな個人賠償責任特約について、以下の内容で解説しています。
個人責任賠償特約の補償内容や、役に立つ場面などを、詳しくご説明します。
この特約を付けると、日常生活の事故で、他人にケガをさせたり所有物を壊したときに、相手に支払う損害賠償金が保険から出ます。
個人賠償責任特約は、こんなときに役立つ
個人賠償責任特約が役に立つのは、以下のようなケースです。
- 自転車事故で加害者になった。
- 子供が他人の子供に、誤ってケガをさせた。
- 失火して、隣家が類焼した(重過失があるとき)。
- 買い物のとき、会計する前に商品を壊した。
- 飼い犬が他人を噛んで、ケガをさせた。
- マンションのベランダから鉢が落ちて、車をキズづけた。
- 室内の水漏れで、階下に損害を与えた。
- ゴルフの練習中に、ドライバーを他人にぶつけて、ケガをさせた。
自動車事故を除く、日常生活の事故全般で、役に立ちます。
対象となる人
保険に入っているご本人と、同居の家族が補償対象です。
細かく分類すると、次のようになります。
- (自動車保険の)記名被保険者
- 記名被保険者の配偶者(内縁を含む)
- 記名被保険者・配偶者の同居の親族または別居の未婚の子

事故の発生場所
国内外の事故を補償するものと、国内のみ補償するものとに分かれます。
ただし、国外の事故を補償する特約でも、国外での示談交渉はやってくれません。
個々の損害保険会社がどちらに当てはまるかは、下で一覧にしています。

保険金額
保険金額の上限は、ほとんどの自動車保険で、あらかじめ決められています。加入者が金額を指定できる商品はごく少数です。
そして、国内事故の上限額は、大半が 1〜3億円の範囲です(各損保会社の上限額は、下で一覧にしています)。

対象外の事故
補償外になる事故もあります。
- 自動車やバイクの事故による損害賠償
- 職務の遂行中の賠償事故
- 車両(船舶・航空機等も)の所有や使用・管理により発生した事故
- ケンカによる損害
- 他人からの借り物を壊した場合
- 同居の親族に対する損害賠償
1〜3は、それぞれ専用の保険が別にあるので、個人賠償責任特約の守備範囲外です。

示談交渉サービス
事故の相手に損害賠償する場合、賠償額を決めるために、相手と示談交渉をおこなわなければなりません。
ほとんどの損害保険会社は、示談交渉を代行してくれます。
ただし、次のケースでは、示談交渉をやってもらえません。
- 相手方が、損害保険会社との交渉を拒否した場合
- こちらに(=補償を受ける人)に、損害賠償責任がない場合
- 事故の相手方に損害賠償請求を行う場合
- 国外の事故(補償する商品でも、示談交渉はやってくれません)

ご利用上の注意点
通常は、自動車保険から保険金が出ると、翌年の等級がダウンして保険料が値上がりします。
さいわいなことに、個人賠償責任特約を使っても、自動車保険の等級には、影響ありません。
なお、上で説明したように、ひとつの契約で家族が補償されるので、補償の重複に注意が必要です。
世帯で複数の自動車保険に入っているときは、どれか一つにこの特約を付ければ十分です。
また、火災保険など、他の損害保険会社の商品にも、この特約を付けることができます。
それとの重複にもご注意ください。
現時点での、おもな自動車保険の個人賠償責任特約の概要を、一覧にしました。
2020年3月現在の、おもな自動車保険の個人賠償責任特約の概要を、一覧にしました。
自動車保険と互換性のある2つの自動車共済も掲載しています。
保険会社 | 概要 |
---|---|
あいおいニッセイ同和 |
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アクサダイレクト |
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イーデザイン損保 |
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AIG損保 |
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SBI損保 |
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共栄火災 |
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セゾン自動車火災 |
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ソニー損保 |
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損保ジャパン |
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チューリッヒ保険 |
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東京海上日動 |
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日新火災 |
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三井ダイレクト損保 | 個人賠償責任特約なし。自転車賠償特約で、自転車事故のみ補償可能。 |
三井住友海上 |
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楽天損保 |
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JA共済 | なし |
全労済 | なし。ただし、自転車賠償責任補償特約はある。 |
保険金の上限額と、国外の事故を補償するかが、差別化のポイントです。
示談交渉についても一通り調べましたが、商品による違いはありませんでした。
主要な自動車保険の見積もりを集めて、比較検討するなら、一括見積もりサービスが便利です。
現在では、損害保険会社のホームページにいくと、自動車保険の保険料を簡単に見積もることができます。
しかし、仕組みや言葉遣いが異なる複数の自動車保険を、同じ条件設定で見積もりするのはけっこう負担ですし、ミスの恐れがあります。

そこで、以下の保険料一括見積もりサービス(無料)をおすすめします。
1回の入力で、おもな自動車保険の見積もりが、一気に集まります。
このサービスの利用者は、平均して保険料を年間約35,000円節約されているそうです。

個人賠償責任特約といっしょに検討していただきたい保険・特約があります。
個人賠償責任特約に興味をお持ちでしたら、この機会に以下もチェックしてください。
人身傷害保険の事故の範囲
自転車事故によるこちらのケガを自動車保険で補償するなら、まず人身傷害保険に注目してください。
人身傷害保険は、ほぼすべての自動車保険で提供されており、これを自動付帯する商品も増えています。
この保険に入るときは、補償される事故の範囲を指定します。
人身傷害保険の補償範囲を最大にすると、自転車事故によるケガも補償されます。
ただし、それでも自転車と車との事故しか、補償されません。

自転車同士、自転車と人、その他日常生活全般でのケガに備えるなら、傷害総合保険など、単体の傷害保険をご検討ください。
日常生活事故に対応した弁護士特約
自動車保険には、示談交渉サービスが自動付帯されていますが、このサービスには限界があります。
こちらに過失がないとき、弁護士法に抵触するので、損保会社は示談交渉をできません。
そんなときのために、弁護士特約が提供されています。
この特約があると、弁護士等への依頼費用が、自動車保険から出ます。

ところで、弁護士特約には、自動車事故を対象としたものと、自動車事故+日常生活での事故を補償するものとがあります。
個人賠償責任保険と組み合わせるなら、後者(=自動車事故と日常生活での事故を補償)がおすすめです。
2020年3月現在、以下の損害保険会社が、日常生活事故に対応した弁護士特約を提供しています。
- アクサダイレクト
- AIG損保
- 共栄火災
- ソニー損保
- 損保ジャパン
- 東京海上日動
- 三井住友海上
【付録】日常生活での賠償責任に備えられる保険は、自動車保険の特約以外にもあります。
個人賠償責任の補償は、自動車保険の特約以外でも販売されています。それらをご案内します。
なお、単体の保険商品として販売されているものもありますが、自動車保険と同様に、特約や付加的な有料サービスとして提供されているのが大半です。
JA共済『賠償責任共済』
ネーミングは保険ではなく共済ですが、内容は個人賠償責任特約と近いです。
補償される事故の範囲を、以下から選べます。
- 個人賠償(個人賠償責任特約と同じ内容)
- 農家包括特約付個人賠償
- 一般賠償(業務上の事故)
- 借家人賠償(借家人が建物を損傷したとき)
- 携行品損害
一番下の携行品損害は、外出中に自分の所持品を破損したときの補償なので、これだけは賠償責任と別物です。
ちなみに、個人賠償は1,000〜5,000万円の範囲で、保険金額の上限を指定できます。
最大5,000万円というのは、他と比べて小さいです。

都道府県民共済『個人賠償責任保険』
全国の都道府県共済で販売されています。
補償は、損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上の3社が共同で引き受けています。
補償内容は個人賠償責任特約の国内向けの補償と同じです。保険金額の上限は3億円で、示談交渉サービスが付きます。

火災保険の個人賠償責任特約
自動車保険の個人賠償責任特約とほぼ同じものです。よって、上で説明したとおり、どちらか一方の特約があれば家族を守ってくれます。
どちらを選んでも、保険としての機能は同じです。
ただ、心配されていることに近い保険に、この特約をつけることを、おすすめします。
たとえば、自転車事故のような交通にかかわる事故がご心配なら、自動車保険の個人賠償責任特約をおすすめします。
逆に、集合住宅にお住まいで、住宅がらみのドラブルが気になるよう、というようなケースでは、火災保険の個人賠償責任特約が適しています。

クレジットカード等の個人賠償責任保険
ほとんどのクレジットカードで、少額の負担で入ることのできる、日常生活に役立つさまざまな保険が提供されています。
個人賠償責任保険も、そうしたメニューの一つとして、多くのクレジットカードで取り上げられています。

例として、3つのカードの補償概要を一覧にしました。
上限額 | 示談交渉 | 備考 | |
---|---|---|---|
JCBカード | 1億円 | ○ | 交通事故の死亡保険付き。 |
三井住友カード | 1〜3億円 | ○ | 死亡保険または傷害保険のいずれかが付く。 |
楽天カード | 1億円 | ○ | 国内外補償。交通事故の死亡保険付き。 |
自動車保険の個人賠償責任特約に比べると、保険金額の上限は低めです。
とは言え、3つとも1億円以上ですから、手薄と言うほどではありません。
また、JCBカードの保険は損保ジャパンが、三井住友カードは三井住友海上が、楽天カードは楽天損保が補償を引き受けます。
本職が提供している保険なので、品質面での不安もなさそうです。