自動車保険を使うと、次の更新から保険料が値上がりします。かえって保険を使うと損になることも。
自動車保険の対人賠償保険、対物賠償保険、車両保険を使うと、通常は次の更新のときに等級ダウンして、保険料が高くなります。
さらに、所定の年数の間、ペナルティとして保険料が割増しされます。
保険料の負担増は年単位で続くので、合計すると保険から受け取った金額より大きくなるかもしれません。

不用意に保険を使って損をしないよう、等級ダウンの仕組みを理解しておきたいです。
このページでは、以下の項目について説明しています。
事故で保険を使うと、次の更新のときに等級が下がり、保険料は高くなります。
自動車保険では、加入者の保険の利用状況が等級で管理されます。
自動車保険の等級は、保険の更新のたびに、つまり毎年見直されます。

過去1年間に保険を使って(保険金を受け取って)いなければ、更新のときに1等級上がります。
逆に、過去1年間に保険を使っていたら、その原因となる事故の種類に合わせて、等級は下がります。
等級の下がり方には、次の3パターンがあります。
3等級ダウン |
|
---|---|
1等級ダウン | 火災、盗難、災害、いたずらなどで車両保険を使ったとき |
下がらない (ノーカウント) |
|
そして、等級が低くなるほど、保険料は高くなります。
事故を起こしても、最終的に任意保険から保険金が出なければ(自賠責保険だけで損害賠償できた場合を含みます)、等級ダウンになりません。
等級が下がるだけでなく、“事故あり割引”が適用されて、保険料はさらに高くなります。
保険を使うと、等級ダウンによる値上がりだけでなく、事故あり割引率が所定の期間適用されて、いっそう高くなります。
“事故あり”の割引率が適用される期間(=事故あり係数適用期間)は、以下のルールで決まります。
- 3等級ダウン事故 ・・・ 次の更新から3年間
- 1等級ダウン事故 ・・・ 次の更新から1年間
等級ごとの“事故あり”割引率
同じ等級でも、“事故あり”だと割引率はグンと低くなります。
下の表が、等級ごとの割引率です(2021年に改定されました)。1~4等級は割増率になります。
等級 | 割引率 | |
---|---|---|
事故あり | 無事故 | |
20等級 | - 51% | - 63% |
19等級 | - 50% | - 57% |
18等級 | - 46% | - 56% |
17等級 | - 44% | - 55% |
16等級 | - 32% | - 54% |
15等級 | - 28% | - 53% |
14等級 | - 25% | - 52% |
13等級 | - 24% | - 51% |
12等級 | - 22% | - 50% |
11等級 | - 20% | - 48% |
10等級 | - 19% | - 46% |
9等級 | - 18% | - 44% |
8等級 | - 15% | - 38% |
7等級 | - 14% | - 27% |
6等級 | - 13% | |
5等級 | - 2% | |
4等級 | + 7% | |
3等級 | + 38% | |
2等級 | + 63% | |
1等級 | + 108% |
赤い文字が、事故あり係数適用期間中の割引率です。右側の、通常の割引率よりかなり低くなります。
等級ダウンしたときの、保険料の推移
下図は、15等級の人が3等級ダウン事故を起こしたときの、等級の取り扱い例です。
この図の等級の変化を、保険料の変化に置き換えると、下のようになります。
自動車保険を使う前に、使うことによって増加する保険料をチェックしましょう。
等級ダウンによって増える保険料を合計すると、まとまった金額になります。
20等級になるまでペナルティが続く
一度等級ダウンすると、下図のように、上限の20等級になるまで、保険料は割増になります。
図は、現在15等級の人が3等級ダウン事故で保険を使ったときの、等級の推移です。

濃いピンクと薄いピンクの合計が、増加する保険料のトータルです。
現在の等級が低い人ほど、増加する保険料の合計は大きくなりやすいのですね・・・
保険料の増加額は、損保会社が計算してくれる
保険を使うことで、更新後の保険料がいくらになるかは、上の割引率の表を使っても正確に計算できません。
なぜなら、自動車保険の保険料には、上表の割引率が適用されない料金(サービス費用等)が含まれていたり、インターネット割引など他の割引が適用されるからです。
損害保険会社に問い合わせるのが、簡単で確実です。

気軽に応じてくれますし、金額はすぐにわかります。
問い合わせても、保険を使わなければ、等級には影響ありません。気軽にお問い合わせください。
保険料の上がり方は、保険金額と無関係
3等級ダウン事故で保険を使った場合、受け取った金額が50万円だろうと5万円だろうと、保険料の上がり方は同じです。
よって、保険金が少額のときは、保険を使わないほうがオトクです。
もっとも、いくらを少額と判断するかは、預貯金の余裕度などに左右されるので、人それぞれです。
ちなみに、保険を使うか使わないかの決断は、治療や修理が終わって、保険金額が確定してからでも間に合います。
等級ダウンのせいで、更新後の保険料が重い負担になりそうなら、保険料の安い自動車保険に乗り換えましょう。
代理店型からダイレクト(ネット通販)型に乗り換える
現在代理店型自動車保険にご加入なら、ダイレクト型に乗り換えることで、保険料の値上がりを抑えることができます。
以下のグラフは、代理店型自動車保険とダイレクト型自動車保険の保険料相場を、6パターンの年齢・等級の組み合わせで比較した結果です。

ダイレクト型に乗り換えると、こちらの手間は増えますが(代理店が無いので)、保険料は確実に安くできます。
前年度に事故があっても、ダイレクト型自動車保険に加入できます。
ただし、1年に複数回事故があるとか、等級が低いなど、ハイリスクなドライバーと見なされると、加入を断られることがあります。
更新時の乗り換えは、簡単でノーリスク
他社の自動車保険への乗り換えは簡単で、リスクがありません。
とくに満期のタイミングで
他社に乗り換えるなら、もとの保険を解約する手続きは、原則として不要です。放置しておけば、自動的に消滅します。
自動車保険の仕組みは
代理店型とダイレクト型とでほとんど同じです。
ただし、ダイレクト型は、加入する人に補償プラン作成や申込手続きをやってもらわなければならないので、シンプルかつ分かりやすいことが重視されます。特約やサービスのメニューは、代理店型より少ないかもしれません。
等級は
代理店型、ダイレクト型の区別なく、新しい自動車保険にそのまま引き継げるので、保険料の面でデメリットはありません。
コストパフォーマンスの良さで自動車保険を選ぶなら、無料の一括見積サービスをおすすめします。
ほとんどの損保会社は、自社のウェブサイトで、簡単に保険料を見積もりできる仕組みを提供しています。
それでも、複数の自動車保険を比較するのは、けっこう時間と労力がかかります。

というのは、仕組みや用語が異る複数の自動車保険を、内容をそろえて見積もりするのは、意外と難しいからです。
時間と労力がかかっても、正確に見積もりシミュレーションできればよいですが、ミスや誤解があるまま決断する恐れがあります。
そこで、無料の一括見積もりサービスをおすすめします。
一回の入力で、おもな自動車保険の見積もりが、お手元に集まります。
このサービスの利用者は、平均して保険料を年間約35,000円節約されているそうです。

【付録①】更新後の保険料が気になるなら、免責金額を設定しましょう。
このページのテーマと特にかかわりのある保険が、対物賠償保険と車両保険です。
どちらも修理代(前者は事故の相手の、後者はこちらの車の修理代)を補償する保険です。
修理代は、意外と小さい金額で収まることが多いです。
そういうときに保険を使うと、等級ダウンで保険料が値上がりするのでもったいないです。
結果として、保険を使わないで、自腹を切ることになりやすいです。
だったら、これらの保険に免責金額を設定して、保険料を安くするほうがオトクです。

免責金額を設定すると、その金額までは常に自腹を切ることになります。
そのかわりに、保険料は安くなります。
はじめから、少額のときに保険を使わないつもりなら、免責金額は合理的です。
【付録②】保険を使った後の等級ダウンについての、よくある疑問Q&Aです。
保険を使った後の等級ダウンについての、よくある質問を一覧にし、Q&A形式で回答を作成しました。
質問:等級ダウンするので、他社に新規加入して6等級にリセットできますか?

回答
損害保険業界には、情報を共有する仕組みがあります。
事故で保険を使った履歴や、1〜5等級の契約情報、事故あり係数が適用されている契約情報などが、共有化されています。
そのため、別の保険会社に変更したり、新たに契約しても、等級をリセットすることは困難です。
ちなみに、不正行為も、情報共有の対象になっています。
質問:前契約を止めてから期間をおけば、等級はリセットできますか?

回答
前契約が終了(満期または解約)してから13ヵ月を超えると、原則として、新規加入して6等級から再スタートできます。
言うまでもないことでが、前契約終了から13ヵ月間は無保険になってしまいます。
質問:等級ダウンで保険料が高くなるので、家族と等級引継ぎしたいのですが・・・
回答
配偶者または同居の家族から、等級を引き継ぐことは可能です。
ただし、等級引継ぎできるのは、以下のいずれかのタイミングに限られます。
- 家庭で利用する車を増車する。
- 自動車保険に加入中の自動車を廃車・譲渡・返却する。
どちらにも当てはまらないときは、等級引継ぎを利用できません。
